上野公園で緑化フェアを見たあと不忍池から旧岩崎邸前にでると、大勢の人が邸前の坂をのぼっている。10月1日、都民の日は旧岩崎邸庭園が無料で入館できるということで日本の建築史に残るといわれる洋館を見学することに。広々した坂道をゆっくり上って洋館北側のドームのある入口から入場する。まさに贅の限りを尽した木造洋風建築で国の重要文化財となっている。
設計は英国人のジョサイア・コンドル。明治10年日本政府の招聘により来日し、東京大学の建築学科の初代教授となった。辰野金吾ら創生期の日本人建築家を育成し、明治以後の日本建築界の基礎を築いた人でもある。彼が設計した建築で現在残っているのは、この旧岩崎邸のほかに旧古河庭園の大谷美術館、清泉女子大学本館、綱町三井倶楽部などがある。
17世紀の英国のジャコビアン様式というものを基調とし、ルネサンスやイスラム風のモチーフが随所に採り入れられている。天井のシルクのペルシャ刺繍やベランダのイスラム風デザインのタイルなど、100年以上経ってより一層深みが増す。1階奥には書院造りを基調とした和室もしつらえられ、部材の一つひとつに現在では入手困難な木材がつかわれているという。洋館の1階には食堂、厨房、書斎、客室、2階には客室、集会場など531.5m²、和館は319.6m²。
往時は1万5000坪余りの敷地があったが、現在はその3分の1程度になっているとのこと。綺麗に刈り込まれた芝地の広々した南側庭園で、建物正面とベランダの列柱などを見ながらみな思い思いにくつろいでいる。繁栄を極めた三菱創始者・岩崎家本邸は戦後国有財産となり、GHQに接収されたり最高裁判所司法研修所などとして使用されたあと、平成13年に東京都の管理となる。
帰り道、本郷の東大構内を抜ける途中で「知と幸福ー研究の現場で考えるしあわせ概念」という公開講座の小さな看板を見つけた。通りかかった学生に聞くと、今から始まるという。講師は「希望学」で知られる東京大学社会科学研究所の玄田有史さんと大学院人文科学系研究科の加藤陽子さん。玄田さんは「幸福と希望の曖昧な世界」というテーマで、加藤さんは「対話でつなぐ、去年と今年、あるいは、大災害と幸福の距離」というテーマでそれぞれ話をしてくれた。かなり面白く、興味深く、偶然にもしあわせな時を過ごすことができた。
◎PHOTOS OF TOKYO CITY by t.utsunomiya
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◎東京都市モノローグ2011年の総集編(漂流する東京)
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photo ; Utsunomiya Tamotsu
text;Hasegawa Kyoko
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