◎TOKYO PHOTO ; BIUTIFUL 30.10.2011
麻薬取引や移民の不法労働の手配などで家族を養うウスバル(ハビエル・バルデム)とその家族の物語り。コーエン兄弟の映画『ノーカントリー』で冷徹な殺人鬼を演じたハビエル・バルデムの魅力に惹かれて映画館に入った。バルセロナの街が舞台だという。黒澤明の『どん底』を思わせる異臭を感じさせるほどの貧困、メキシコで撮影したような感覚もある。父親が子どもに教える「BIUTIFUL」のスペルミスも主人公と家族の息苦しいほどの生い立ちを伝えていて悲しい。ネットでの評価も高いようだ。
しかし、ウスバルが助けようとした不法移民の大量死や海岸に打ち上げられた遺体群、バーでの狂騒、アジア系兄弟の同性愛、霊能力者によるウスバルの魂の救済といった描写は必要だったのだろうか。どこかハリウッド的な演出の臭いを感じて共感できなかった。なければ傑出した作品となったと思うのだが。
ジャン=ルック・ゴダールと並びヌーベル・バーグの旗手の一人であったフランソワ・トリュフォーは、不鮮明な記憶だが「貧困を描いた映画は多い。しかし本当に貧困であった人間が描いた貧困の映画はチャップリンしか知らない」というようなことを言っている。貧困を描くことはかくも難しい。監督は『バベル』のア レハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。
文;宇都宮 保
0 件のコメント:
コメントを投稿