2014年8月6日水曜日

『コリアン世界の旅』を読む

 野村 進/著

野村 進 氏は、日本のノンフィクション作家。『コリアン世界の旅』で大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞受賞。

この本は、日本人の立場で「在日」を描いたのではなく、在日の人たちに深く入り込んで彼らの目線で描いている点が説得力を持っていて、一気に読了してしまった。

何度も取材拒否にあって、困難な取材であったと野村氏本人も言っている。パチンコ業界、焼肉業界などは「在日」の彼らの存在なくして語れないし、また人に夢を与える芸能・スポーツの世界でも在日の人たちの存在は大きい。そんな「コリアン世界」を野村氏は丹念に取材して心を寄せて描きだす。最終章では、在日歌手、新井英一の生きざまを描いていて、ぜひ彼の歌に触れたいと思った。

多くの在日コリアンは、重い苦難の歴史を背負って日本で生活してきた。民族名のほかに日本名を持ち、生まれた時から日本名を名乗っている人が多いのも、差別や偏見を恐れてのこと。民族名を名乗るのも日本名を名乗るのもどちらにしても、お互いの中に解けない塊となっている。コリアン世界の厳しい現実を知ったことは自分の中で新しい視点になった。

この本のなかでは、米国やベトナムに暮らすコリアンの人たちについても触れられている。どこの国にもどんな世界にも差別と偏見はあり、学ぶことでしか克服の道はないのではないかと、改めて思う。

text;Hasegawa

0 件のコメント:

コメントを投稿