◎TOKYO PHOTO musicmanufacture; 9.8.2016
長崎に原爆がおとされた8月9日、東大の安田講堂で、「不戦の歳時記」と題し、映画「火垂るの墓」の上映とパネルトークが行われた。この催しは伊東乾先生の「哲学熟議14+哲学遊戯5」が主催。一般の人も参加できてかなり興味深い取り組み。
映画「火垂るの墓」は、以前テレビでも見たが、あらためて戦争の残酷さが身にしみた。終戦前後の混乱の中を必死に生き抜こうとする14歳の兄と4歳の妹を描いていて、原作は野坂昭如。野坂自身の戦争原体験を題材した作品といわれる。兄を慕う幼い節子の健気さが涙を誘う。
パネルトークでは、映画「火垂るの墓」の監督、高畑勲さん、俳人で96歳の金子兜太さん、同じく俳人の黒田杏子さん、東大哲学科助教授の一ノ瀬正樹さんが壇上に。一ノ瀬先生の「広島長崎に原爆を落としたことで、戦争を早く終結に向かわせることが出来てさらに多くの人を死なせずにすんだと、欧米人の多くの人が原爆を肯定的に捉えている。これをどう考えたらいいか」との問いかけに対し、高畑さんが、日本人の「大勢に従って寄りかかって流されてしまう、なぜか凝りもせず、ずるずるそれを繰り返す」気質を考えると、原爆は許せないが、日本人が戦争を続けていた可能性は否定できないとの発言もあった。
金子兜太さんは大学卒業後、日銀に入り、25歳のときに戦地に赴く。トラック島での戦闘の惨状を生の声で聞かせてくれた。まるで映画のワンシーン、ワンシーンのように…。おっちょこちょいの若者はこの戦争に勝たねばならないと思っていた、とご自分のことを話された。この戦争体験が基となり反戦意識を深めていく。戦地から帰り日銀に復職後、長崎に赴任した際に、原爆に苦しむ多くの人達のことを書こうと思ったという。現在は新聞紙上で俳句の選者のほか、さまざまな場所で戦争体験を伝えることを行っており、この日も壇上で次から次へお話が溢れ、間もなく97歳になるという情熱的な金子さんに、驚嘆!
伊東乾さんの音楽にも感動。伊東さんは『さよなら、サイレント・ネイビー 地下鉄に乗った同級生』で第4回開高健ノンフィクション賞を受賞したことで知った。オウム真理教事件・豊田亨死刑囚と東大物理学科で同級生だったことで事件の真相に迫ろうとした読み応えのある本だった。伊東さんは東京大学理学部物理学科を出て音楽家という異色の経歴なのだ。
最後に、不戦祈念演奏として、十歳の愛児を原爆で亡くした満田廣志さんの「山河慟哭」から数句、戦没学生の田辺利宏「戦場日誌」抜粋から、高畑勲「君が戦争を欲しいならば」抜粋から、金子兜太「少年」から三句。ヴィオラ、チェロ、オーボエ、鍵盤楽器、打楽器とソプラノによる競演はしみじみ美しかった。ゲネラルプローベ(本番間近に舞台上で行う最終リハーサル)の様子からランスルー(総ざらい)まで面白く見せてもらった。
◎photograph UTSUNOMIYA TAMOTSU
http://utsunomiyatamotsu.wix.com/photosite/
◎PHOTOS OF TOKYO CITY by t.utsunomiya
http://photos-of-tokyo.blogspot.jp/
◎東京都市モノローグ2011年の総集編(漂流する東京)
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photo ; Utsunomiya
text;Hasegawa
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